グラン・バカンス 廃園の天使1:飛浩隆 / The Fantastic Art of Beksinski

「グラン・バカンス」はハヤカワSFシリーズJコレクション版を図書館で見つけて、タイトルと表紙に興味を持った読みました。
著者の飛さんは、この作品以外にも様々なSF賞を受賞されています。2010年は「自生の夢」が第41回星雲賞日本短編部門に選ばれたそう。

<あらすじ>
仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模した“夏の区界”では、人間の訪問が途絶えてから1000年ものあいだ、取り残されたAIたちが、永遠に続く夏休みを繰り返していた。
だが、突如として終焉のときが訪れる。謎のプログラム“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのである。こうして、わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦がはじまる―『廃園の天使』3部作、衝撃の開幕篇。



冒頭はスタンド・バイ・ミーのような夏休みの1日から始まりますが、のどかな夏休みをコンセプトにした世界が、突如外部からの攻撃で崩壊していきます。
世界の崩壊を食い止めようとする攻防の中で明らかになる、AI達の苦痛と、“数値海岸”を作った人間達の欲望が官能的に描かれています。


読んでいると、なんとなく三島由紀夫の文章を読んだ時の印象を思い出します。読んでてドキドキする感覚に訴える描写と、1文にも無駄がない緻密さが似てるように思うのかな。


少々ネタバレですが、あらすじに「絶望の一夜」とある通り、“夏の区界”はある意味失われてしまいます。そのシーンを、ベクシンスキーのこの作品をみて思い出しました。



ベクシンスキーは、たまたま友達のtweetで知った画家で、ポーランドの方だそうです。
Beksinski Official Web Site
サイトの音楽もステキ☆


グラン・バカンスは、廃園の天使シリーズの1作目なので謎のまま残っていることも多々あります。2作目「ラギット・ガール」では、仮想リゾート“数値海岸”が作られるまでが人間の側から語られます。すべての謎は今後の続刊になると思いますが、1作ごとに結末は着いています。


毎年、夏になると読み返したくなる1冊です。