キオク

ぶーん、ぶーん…
細くながく、のびていく。
あれは太陽が生まれる前の音。
くちかけた瞳に映るのは、弱々しく鳴いている鳥。
辺りには、さらさらと光るものが降りそそぎ、たわみ、からまり、途切れまた、流れていく。
時折、うがったような黒い点がうかび、周囲にひろがった光るものを食い荒らす。
ちりぢりになった光は干からび固まって、沈んでいった。


私の身体、私達の身体。
奪いあい、膨れていく身体は、干からびた光をふみしだきながら揺れる。


ぶーん、ぶーん…


あれはなんの音だったか。
私達の背中で新たな眼球がひらき、あたりをぐるりと見回した。
やがて私にも、開いたばかりの瞳から、光を見い出すことがあるだろう。


すぐそばで、水の生まれる音がする。


(2004年 500文字の心臓 イラスト競作投稿)
イラストレータ宮田真司さんの描き下ろしイラストをモチーフに競作 →イラスト